歯が移動するシステムについて
矯正治療について、歯の表側に装着する器具を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。なぜ、あのような器具を取り付けなければならないのか、どうやって歯並びを改善するのか、矯正歯科治療の一番基礎となる、その仕組みについてご説明します。
一般的なワイヤー矯正の場合、それぞれの歯の表面中心部あたりにブラケットという金属のボタンのような器具を取り付けます。そして、そのブラケットにワイヤーを通して、少しずつ引っ張るような形で歯を動かしていくのです。
歯が歯茎に埋まっている部分のことを歯根といい、歯根とそれを支える骨の間には歯根膜があります。歯根膜は、食事で噛むときなどに歯にかかる負荷を和らげるクッションのような働きをしているものです。ワイヤー矯正で歯を動かすときにも、この歯根膜が重要になります。力を加えて歯を水平動させるようなとき、力が加わるほうの歯根膜は縮み、反対側の歯根膜は伸び、同時に縮んだほうは骨を溶かす細胞、伸びたほうは骨を作る細胞が活性化します。そうして、歯根膜が水平動するにしたがって、歯も動いていくのです。この仕組みを利用することで歯科矯正治療は行われます。治療の際、歯の状態や歯並びなどによって、歯と歯根膜の動かし方を変えることが必要です。もし歯が斜めになっている場合には、歯を正しく真っ直ぐにさせるために傾斜移動をさせます。このとき、歯根の先端を支点として歯が起き上がるような形で傾斜移動させるのです。歯がねじれた生え方をしている場合には、正しい歯並び、噛み合わせになるように歯を回転させます。歯の中心部の支点を定めて、そこからうまく力を加えて回転させるのです。
以上のような仕組みで歯を移動させるのですが、急に強い力を加えて簡単に歯を動かせるわけではありません。約3~4週間ほどを1クールと考え、その期間に歯根が動くのは最大0.5mmほどです。また、いくつかの歯を移動させたい場合は、一気に全ての歯を動かすのではなく、計画的に順番に動かしていかなければなりません。このようなシステムで、少しずつ歯を動かし、徐々に歯並びや噛み合わせを整えていくのです。